酒蔵はいま | 2018年12月28日
12月16日、しぼりたて新酒の第1弾となる、「しぼりたて 純米 生原酒 木ふね搾り」のモロミを搾りました。
お酒を搾る装置のことを酒槽(さかぶね)と呼んでおり、現場ではお酒を搾ることを「ふねにのる」とか、単に「のる」って言います。またお酒を搾ることを上槽(じょうそう)と言うことから「アゲる」とも言ったりもします。
豊の秋では、通称「ヤブタ」と呼んでいる自動圧搾機と、「木ふね」と呼んでいる木製の酒槽があります。木ふねと言うけど、大部分がコンクリートにステンレス張りになっており、もはやハイブリッドな酒槽になっております。。。
さて、木ふねでの酒搾りは、もろみを酒袋につめ、酒槽の中に積み上げていきます。
積んだ重さで酒袋からお酒がにじみ出てきます。
最初のうちは、積んでる作業の最中からお酒がにじみ出てくるんですが袋の目から細かい粒子がすり抜けていくのでにごりが多い。
こういう状態のお酒を「あらばしり」と言っています。にごり(オリ)や、なじむ前の酒槽や酒袋のにおいがお酒に移ってることもありこれはこれで別にします。
次第に酒袋の目がつまっていき、にじみ出るお酒も澄んでくると「中取り」という状態になり製品に近いお酒になります、というかこれをそのまま詰めたのが「しぼりたて 純米 生原酒 木ふね搾り」です!
その後、上蓋を下げて圧搾していきます。お酒の垂れる量をみながら蔵人が徐々に圧力を上げる操作をしていきます。
そうやって圧力をかけられるところまでかけてぺちゃんこになったら、翌日酒袋を中央に寄せて積み直して再び圧搾して搾り切ります。
この操作やこのとき出てくるお酒を「責め(せめ)」と言って、質が落ちるので「中取り」とは別にします。
以上これが「ヤブタ」だと、スイッチひとつで「木ふね」で搾れる倍の量のモロミを半分の時間で済ませることができます。
あえて手間のかかる木ふねで搾った「しぼりたて 純米 生原酒 木ふね搾り」には手作業の味わいも乗ってますのでどうぞお楽しみください。
米田酒造では酒蔵敷地に井戸を持っていません。なので車で約20分の郊外に水を採りにいきます。
場所は松江市の忌部地区。松江と奥出雲の境目となるところです。
ここでは古代に朝廷に献上するために玉造の勾玉を洗い清めた「佐水(さみず)」が湧き出ており、松江市が近代化水道施設を建設する際の水源にも選ばれ、近くには現在も稼働する「千本貯水池(千本ダム)」があります。千本ダムは大正7年に造られた山陰初の水道用のダムで、2003年に日本土木学会選奨土木遺産、2008年に登録有形文化財に登録されています
土木学会 選奨土木遺産のページによる解説はこちら↓↓
http://committees.jsce.or.jp/heritage/node/289
仕込み水の水源では水神様が祀ってあり、綺麗な水を好むイモリも遊んでいます。
というような場所で採れる仕込水は、柔らかくやさしい口当たりです。ある時、新入社員が昼食にカップ麺を食べようとしてたので仕込水のお湯で作らせたところ「いつもよりマイルドだ」と言ったぐらいと言えば水質を想像していただけるでしょうか・・・。
この日はまだ仕込みが始まったばかりの、のどかな秋の日でしたが雨の日も雪の日も毎日水を採りに行っています。ときには配水管が詰まったり、大雪でタイヤがはまったりとトラブルがおきますが今年も事故の無いよう安全運転で参ります。
酒蔵はいま | 2018年12月1日
酒蔵では順調に仕込みが続いています。
日本酒では、一つのタンクにお酒を仕込むのにのべ4日間3回に分けて仕込みます。よく言われる三段仕込みと言われるものです。
一度に全量の麹と水と蒸米で仕込むと、酒母で造られた酸が薄まってしまい意図しない微生物に汚染されてしまうからで、小分けに仕込むことで安全に発酵に導くという狙いがあります。
まずは、本仕込の1日目「初添え」。比較的高い温度で柔らかい蒸米で仕込みます。
2日目は「踊り」と言って仕込みは休み。温度が下がらないように気を付けて酵母の増殖を進める時間です。
3日目は「仲添え」。初添えより硬くした蒸米で温度も低めに仕込みます。硬くするっていうのはざっくり言うと米の水分を少なくして蒸すってことです。
4日目は「留添え」。仲添えよりさらに硬くした蒸米と麹で10度以下の低温で仕込みます。この日をもって「もろみ」の1日目とします。ここから約3週間発酵をコントロールして搾ってお酒になるわけです。
左から、「初添え」「仲添え」「留添え」。液面が上がってるのが分かるでしょうか?
前の杜氏さん、「初添え」「仲添え」「留添え」の蒸米の固さを「軟ー硬ー剛(ナンーコウーゴウ)」なんて表現してました。
このように単に仕込みと言っても、なかなか一言で済まないところもあり、真面目な蔵人さんの話が長くなるのはこのためです(笑)