『杜氏さんの言葉に学ぶ』より引用【著者:国税庁醸造研究所 伊藤 清氏】

 これもすぐには信じられない話であったが、いわゆるドレインを添加した合成吟醸は最初は香りが良くてもそのうち香りが飛んで無くなり、本格的な吟醸とは明らかに香りの保ちが違うということは何となく感じていたことであったので、やはりこれも有り得ることだと考えるようになった。
 そこでアルコールとブドウ糖それに緩衝液からなる合成清酒と、対照として純米酒を用い、それに香気成分を添加した後開放状態で振とうする実を行ってみたが、純米酒の方が香気成分の減少速度が小さかった。このことは清酒中には香気の保留物質が存在することを示しているものである。第2図に香気保留のモデルを示したが香気保留物質と香気成分との間の相互作用によって香気成分を清酒中に引き留めている。この結果上立ち香は一時的に減少するが、含み香は感じられる。また散逸を防止するので総合的に考えると保留効果は大きいといえる。この保留物質がどういうものであるか、また麹が作るのかあるいは酵母がつくるのか等は現在全く不明であるが、重要な研究課題であると考えられる。

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