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『杜氏さんの言葉に学ぶ』より引用【著者:国税庁醸造研究所 伊藤 清氏】
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杜氏さんは麹の品質を判断するとき破精込みを最も重視する。そこで破精について少し突っ込んで考えてみた。麹菌が蒸米に繁殖して菌糸が白く肉眼で見えるようになった状態を破精といい、菌糸が米粒表面に繁殖した状態を破精廻り、米粒内部にくいこんでいる状態を破精込みという。また破精の状態を示す言葉に、総破精、突き破精、塗り破精、バカ破精等があるのは周知のことであると思う。第3図に総破精麹、突き破精麹の断面写真を示した。
さてこの破精ということを少し科学的な言葉で表現すれば、米粒という固体培地における麹菌菌体の3次元的な分布、ということになるのではないだろうか。即ち、米粒表面における菌糸の水平的な分布が破精廻りであり、米粒表面から内部に向かっての垂直的な分布が破精込みということになるであろう。 |
そこで、麹中の菌体分布を測定してみた。結果を第4図に示したが、この図では全菌体量の約50%もの菌体が麹の表面から15%の間に存在している。麹菌体は思った以上に麹の表面付近に集中して存在することがわかった。このようにして破精込みを客観的に、また数量的に表すことが可能となったが、その詳細はかなり煩雑であるのでここでは省略する。酵素の分布も菌体分布と同様の方法で測定できる。菌体分布と同様に酵素も麹の表面近くに集中して存在すること、また麹のタイプによって分布の仕方が異なることがわかったが、このことは麹自体の溶解性に深く関わることであろう。また麹の表面では菌体量当たりの力価が低い傾向が認められたが、これは麹の品質に関わることだと思われる。 全国の酒造場から麹を集め、製造要因、酵素力価、菌体分布等を分析し、その結果を主成分分析した結果、破精込みが酵素力価と深く関わっていることがわかった。特に破精込みが悪いとプロテアーゼ、酸性カルボキシペプチターゼ力価が増加する傾向にあることを示している点に興味がもたれる。 この理由は不明であるが今後検討していかなければならない大きな問題であろう。 このように、破精込みは麹の品質にとってやはり重要な因子であることがわかったがその原因、即ち破精込みと麹菌の生理の関係、については残念ながらわからない。私にとっての大きなブラックボックスであるが、今後機会があれば挑戦してみたいと考えている。 |
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