| ○出雲弁 |
○標準語訳 |
|
〜たぶっさんが くもう〜
|
〜旅伏山(たぶしさん)が曇る(注)〜
|
| 「こら こら こら。また はじめたかや。ほんね。おまえやちゃ まえねち まえねち けんんかばっかぁしてからねぇ。」 |
「こら、こら こら。また始まった。ほんとに お前達は毎日 毎日けんかばかりして。どうしたことだ。」 |
| 「そげん。 おらが 本 見ちょったら、たけしが とおけんだわね。」 |
「だって、ぼくが 本を見ていたら たけしが 本を取るから けんかになったんだよ。」 |
| 「たけしは おととだらがね。なかよししえ見いだがね。」 |
「たけしは 弟だろう。仲良くして本を見るんだよ。」 |
| 「ほーら しぐ、おととの味方になってかぁね。」 |
「ほら、すぐ 弟の味方になって…。」 |
| 「また 口ごたえ したわ。おまえは あんさんだらがぁ。そうね このざまは なんだかぇのう。まぁじまじ らしがねがの。こうがおまえやちの ざしきかや」 |
「また、お前が口ごたえをする。お前は 兄さんだろう。それに、このへやの ようすは なんだい。まあまあ、ちらかして だらしがないねえ。これが、お前達の 部屋かね」 |
| 「ほらみぃ。たけし、おまえがちらかすけんだのう。」 |
「ほら、たけし。お前がちらかしたから叱られるがのう。」 |
| 「そげん おらばっかぁ ちらかいちょせんがねぇ。」 |
「そんな。ぼくだけがちらかしているのじゃないよ。」 |
| 「なにいぃ。口ごたえしいか。」 |
「なんだと。お前、口ごたえする気か。」 |
| 「なに えっちょら。おまえが わりがのう。」 |
「何言っているんだい。兄様の方が悪いのだよ。」 |
| 「なにいぃ。」 |
「なんだと。」 |
| 「こら! どげんしたもんだ。そげね大はえごんして。こらっ! やめぇだが。」 |
「こらっ。どうしたことだ。そんなに大さわぎして。もう けんかやめないか。」
|
| 「ほーら、えんまに、たけしの 旅伏さんがくもうぞ。ほらほらくもうだいたぞう。」 |
「ほら、今に たけしの目からなみだが出るぞ。ほら ほら、目がくもり出したぞ。」 |
| 「なに えっちょらぁくもうもんか。」 |
「何言っている。なみだなんか出すもんか。」 |
| 「くもった くもった旅伏さんがくもった。」 |
「やぁい、くもった くもった。旅伏さんがくもった。」 |
|
「あいけえ。もうやめえだが。はやこと 外へ出えだ 出えだ。ああ ほにょって 出てごえたわ。こうで ばくらとしたわ。ほんね けんかばっかぁしてからね。」
|
「ああ、もう やめなさい。早く外へ出て遊びなさい。ああ、やっと外へ出てくれた。これで ほっとしたわ。ほんとに、まあ けんかばかりして。」 |
| |
|
| |
(注):「旅伏山がくもる」とは、平田地域で旅伏山に雲がかかると、まもなく雨が降るので、子供達の間では涙ぐんで今にも泣き出す直前の様子を言う。 |