「島根の民話」を紹介するコーナー
〜 「白米城(益田市桂平町)」 〜
 今から450年くらい前の3月、今の桂平(かつらひら)町にあった横山城へ周防(山口県)の陶尾張守(すえおわりのかみ)が一万の大軍を率いて攻め寄せて来ました。守り手の喜島備後守の兵はわずかに百名、けれども守りにはめっぽう堅い山城です。懸命の攻撃にもよく持ちこたえ、戦いは長期化し、いつしか5月になってしまいました。
 ところが、ここで一つ大きな問題が起こったのです。それはこの年に限って雨が少なく、水が不足してきたことでした。とりわけ横山城の方は深刻で、井戸は枯れてしまいましたが、周囲の谷川は敵の手に落ち、水を汲むことができません。そこを利用して相手は一気に大勢を決すべく総攻撃の準備を始めました。その様子は守り手の方でもすぐわかりました。
 それに対抗して考え出された苦肉の策は、白米を水に見せかけて馬を洗い、いかにも水が豊富であるかのように敵を欺く作戦でした。時を移さず何頭かの馬が引き出され、桶から水ならぬ白米が馬にかけられたのです。
 はるか離れた所から、これを見つけた敵の見張りは、この様子を早速主君に報告しました。それを聞いた陶尾張守は驚きました。
 「われわれでさえ水不足で悩んでいるのに、横山城では馬に洗う水がふんだんにあるとはどういうことだ。これはきっと城中に隠し井戸があるからに違いない。これでは戦っても勝ち目はあるまい。引き上げよう」
彼はこう決心したのです。そして直ちに兵をまとめ、周防の国へ引き上げて行きました。
 横山城は、それ以後、長らく安泰であったということです。

【メモ】酒の元となる米にまつわる伝説である。
(ニ條村物語)
※「酒学事始」より引用させていただきました。発行元:(株)プロジェクト、著者:酒井董美