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〜 「鷲が岩屋の天狗(隠岐郡布施村)」 〜
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布施村大字布施に大浜という屋号の家がありました。昔、ここの先祖が若いときに村の山奥の仕事から帰ろうとしたら、夕方の薄暗がりの山道でいきなり天狗と出会ったのです。
「おい、おまえ、三年ほどわしの家来になってくれ」
「それは無理です」
「それなら三日でよいから家来になれ。悪いようにはしないから」
若者もしかたなく承知しました。天狗はすぐに彼を隠岐島の最高峰、大満寺の頂上近くにある鷲が岩屋に連れて行きました。
さて、片や村では若者が行方不明になったと大変な騒動で、八方手を尽くして捜しましたが見つからず、とうとう三年を経過してしまいました。やむなく葬儀を出そうということになり、みんなが大浜の家に集まって来ました。
何とそこへ若者が帰って来たのです。
「これはどういうことだ。いったいだれの葬式かい」
「何を言っておる。おまえが三年間も帰ってこないから、諦めて葬式をするとこだが」
「なに、馬鹿なことを。おれはたった三日間帰らなかっただけではないか」
彼は初め三年ということについては、どうしても承知しませんでした。そのうち彼の話を聞こうということになり、彼はこう話したのです。
「天狗の供であるとき、但馬の国(兵庫県)の大酒屋へ酒を汲みに行ったことがあります。そのとき、天狗は私なら2〜3人入るような大柄杓で、持って行った袋に酒を何杯も詰めたので、たくさんの大桶が空になっていきました。それを背負って帰りかけると、いつの間にか夜になり、道が暗くなっていきました。そこで天狗は目の下の町に向かって火の玉を投げたら、何軒かが火事になり、その明かりで鷲が岩屋まで飛んで帰ったこともありました」
さて、これを聞いていた親類の中に一人の船乗りがいました。彼はその後、但馬の港で風待ちをしたおり、念のために造り酒屋を訪ねてみました。主人にその話をしますと、
「そうだったのですか。かなり前になりますが、私のところで大桶の酒が突然、一滴もなくなったことがありました」
「なるほどそれなら話は合いますね」
「それに隠岐の天狗様が気に入られた酒なら、めでたいことこの上なし。末永く繁盛する印です。これから祝いをしますから、どうかあなたも参加なさってください」
主人はそう言うが早いか、皆をせかせて急いで宴席の準備を整え、一晩どんちゃん騒ぎをしたということです。
それから大浜家では、最近まで天狗の爪が家宝として残されていましたが、今はよそへ引っ越したため家はなく、親類の某家がそれを預かっているということです。さらに鷲が岩屋の洞窟に天狗が八体祀ってありましたが、現在では一体なくなって七体になっています。けれども、信心深い里人たちは、今も年に数回はそこへ参詣を続けているのです。 |
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(隠岐島の伝説)
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