酒蔵には酒造りをするのに欠かせない道具がたくさんあります。豊の秋では昔ながらの木製のものから近代的な機械器具まで幅広く使用しています。この中には蔵人の手作りの品も数多くあるんですよ♪
 変わった形やおかしなネーミングなど色々とありますのでじ〜っくりお楽しみ下さい。 v(^o^)v   
 
洗浄
【ささら】
 「ささら」は、25cm位の長さの竹を細かく割って片手で一握りくらいに束ねて、一方または中央を針金で縛ったもので、「豊の秋」では竹の一方を縛って使います。
 木桶や試桶や「さる」、「ねこ」、「きつね」(後々、解説します)などの木製道具は、「ささら」を使い木目に沿って並行にしごきます。その要領は、「ささら」の先の方をつぶして平たく握り、力を入れて木目の中の酒質を扱き出す気持ちで行います。
 ちなみに、ステンレスなどの金属容器は、ブラシで手入れを行います。

【試桶(ためおけ)
 少量の清酒・もろみ・水・湯などを運ぶのに用いる把手(とって)の付いた容器で、古くは杉材で作られていましたが、現在はアルミ製・プラスチック製が多く用いられています。試桶は液体の少量運搬の用途の他に、清酒をろ過する際に炉過助剤のかくはんにも使用されます。 ポンプが開発されるまでは、液体の運搬は試桶によって全部人力で行われていました。
 「豊の秋」では木製の試桶も現役で使用されています。

【木製の試桶】
水・湯の運搬
【アルミ製ステンレス製の試桶】
少量の清酒・もろみ・水・湯の運搬

木製

アルミ製

プラスチック製

【半切桶(はんぎりおけ)
 清酒・もろみ・水・湯を入れたり、いろいろな小道具や雑物を洗うのに使う容器です。古くは木製でしたが、現在はアルミ製・ステンレス製が多く用いられています。
 「豊の秋」では木製の半切も現役で使用されています。

【木製の半切】
・洗米(水を入れた半切を3つ並べ、順番にその中で米を手洗いしていく。)
・洗い物(小道具等)
【ステンレス製の半切】
・洗米後の浸漬(限定吸水)
・洗い物(小道具、比較的大きな物)
・清酒のろ過

木製

ステンレス製

【杓(しゃく)

柄杓(杉材製)

柄杓(アルミ製)

柄杓(竹製)

汲杓(杉材製)
 杓は水・湯・もろみなどを汲むための柄のついた容器で、用途により種々の名称が付いています。いずれも杉材製でしたが、最近はアルミニウムなどの金属製のものも使用されています。

・柄杓(えじゃく)…一升杓(柄の長さ約50cm)ともいい、2L程度を汲む杓です。竹製の柄杓(柄の長さ約1m)は、少量(約0.5Lまで)程度を汲むのに用います。
・釜杓(かまじゃく)…釜から湯を汲み出すときに用います。柄の長さは2mにも及びます(下記写真参照)。
・湯当杓(ゆあてじゃく)…3〜4Lの熱湯を汲み、殺菌・洗浄の目的で容器に湯をかける杓です。豊の秋は、釜杓を湯当杓として使用しています。
・汲杓(くみじゃく)…酒母・もろみ等の汲み出しに用います。

【胡瓜(きゅうり)
 釜縁の一部にはめ込む木製の道具(写真:青で囲った部分)で、裏面は釜縁に合せて溝が切ってあります。湯杓(ゆじゃく)で湯を汲むとき湯杓の柄が直接釜縁に当たって損傷することを防ぐのが目的です。形が釜縁に沿うように曲がっており、その形が胡瓜に似ているのでこの名があります(写真は胡瓜の形っぽくないですが…)。

【高圧洗浄機】
 各種酒造道具の洗浄には、ささらやブラシなどと併用して高圧洗浄機が使用されます。ささらやブラシは主に木製の道具や比較的小さい道具を洗うのに使用し、高圧洗浄機は大きい道具や蔵内洗浄などに使用しています(現在、酒蔵では精米と並行して蔵内洗浄が行われています)。
 使用方法は、まず試桶又は半切に水を貯め、その中に吸入口を入れます。あとは、水を少量ずつ出しながら、噴出口を操作するだけです。高圧洗浄機はプランジャーポンプによる高圧水を噴射することによって少量の水で能率的に洗浄作業ができ、高い壁や天井など手の届かない個所でも楽々洗浄できます。
 高圧洗浄機と言えば、思いつくのが「コイン洗車場」。よく利用していますが、毎回あの高圧力には驚かされます。水が出たとたんに体が押し戻されるくらいですから、かなりの高圧力なのでしょう…。間違って手に当たってしまうと、もう涙、涙…。
 最近では、ホームセンター等でコンパクトサイズの洗浄機とかホース先に付けるノズルをよく見掛けます。蔵人さんも何人か持っており、農器具の泥落としに大活躍しているそうです。

【大型洗濯機】
 大型洗濯機は、ご家庭にある一般的な「縦胴タイプ」のものとは異なり、「横胴タイプ」のものです。洗浄能力は、「叩き効果」や「もみ効果」などによりご家庭のタイプより優れています。
 酒蔵では衛生面には特に気を配っているので、酒造道具の洗浄は入念に行っています。この大型洗濯機では、洗米時に使用する「洗い布」、蒸し時に使用する「甑布」、室で使用する「敷布」「麻布」、上槽時に使用する「酒袋」などを洗浄します。
 
運搬
【阿弥陀車(あみだぐるま)
 重たい物を小さな力で上げ下ろしする為の道具で、八角形の車輪と車軸で構成されその形が阿弥陀像の光背に似ているのでこう呼ばれています。
 阿弥陀車は滑車の原理に従っており、車軸に巻いた綱は重たい物を吊る役目をし、車輪部に巻いた綱を引いて軸を回転させ小さな力で重たい物を引き上げます。
 「豊の秋」では阿弥陀車も現役で使用されています。

【桶車(おけぐるま)
 大桶・タンクを移動、運搬する際に使用する一種の手押し四輪者です。タンクはくつ石(台)の上に据えてあるので、桶車の台枠の高さはそのままタンクの下に入れて台車に乗せられるように低くなっています。
 写真は、水取り用タンクを乗せているところです。

【タンクローリー】
 松江市郊外に多量の仕込水を採取に行く際に使用する容器です。車に積み下ろしができるようになっているので、酒造期間のみトラックに積み上げ終了すると下ろします。タンクの容量は約1,500Lで、内部に波立ちを押さえるため防波板が設けてあります。
 採水方法は貯水場に設置してある桶に名醸呑を取り付け、試桶に水を出しながら水中ポンプで吸わせホースを通してタンクローリーに貯めていきます。
 通常、このタンクローリーで1日2回の割合で採水に行きます。吟醸の仕込時には、洗米・浸漬工程において良質水が多量に必要となるので、1日3回の割合で採水に行きます。

【フォークリフト】
 フォークリフトは車体の前方に前後にわずかに傾斜できるマストと、これに沿って高く昇降できるフォークを備えた運搬車で、フォーク(爪)をパレット等に差し込み持ち上げて運搬します。箱物(ダンボール、Pケース等)、袋物(酒米等)、タンク等を倉庫や仕込蔵へ搬入したり、トラックへの積み込み・積み下ろしなどに広く利用されています。
 多くの人手を必要とせず手早く重量物を運ぶことができるフォークリフト、酒蔵には無くてはならない運搬車です。

【乗用車と違う主な点】
・物を積むためのフォークとマストがあること。最初の頃は、フォークとマストのレバーを混同するわ、フォークの上下稼動やマストの前後稼動を間違えるわで散々な目にあいました…。
・ギヤ構成が2MT(1,2,R)。半クラッチができないとやばいです…。
・方向転換時に前輪タイヤでなく"後輪タイヤ"が動くこと。その稼動範囲も乗用車より広く小回りがとてもよく効きます。

【ちんちょう】
 把手のない荷物を引っ掛けて担うための道具で、にない縄の両端に鉄製の釣爪をつけたものです。

【ホイスト】
 小型の巻き上げ機の付いた電気ホイストで、先端にフックを付けたワイヤロープを巻く又は戻して重量物を上下させる機械です。
 酒蔵では、2つのホイストを装備しています。一つは、1Fの洗い場・釜場、2Fの麹室へとつながっています。これは、麹室で使用する酒造道具の上げ下げや麹用の蒸米を引き込む際に使用します。ホイスト内に台車を出し入れして物を運ぶので、人手があまり要らず輸送もスムーズに行えます。
 もう一方は、1Fの貯蔵庫、2Fの仕込蔵、3Fの酒母蔵へとつながっています。これは、仕込蔵や酒母蔵で使用する酒造道具の上げ下げや酒母の仕込で使用する蒸米を上げる際に使用します。
 昔は、麹室への蒸米の引き込みや酒母の仕込で使用する蒸米は背負って階段を駆け上がり何往復もしていました。酒造道具の上げ下げも同様です。今では、ホイストが導入されたことにより作業効率が格段に向上しました。
 
精米
【米計量器】
 米粒大の穴が縦10個×横10個=100個あります。この穴の中に米を入れることにより100個単位で米粒をカウントできます。『千粒重』の場合、これを10回繰り返して行い合計1000粒の米を採取し重さを量ります。玄米、白米どちらでも利用できます。

【米の試料皿】
 この皿に玄米又は精米後の白米を入れ、米の状態を観察します。
 
洗米
【洗い布】
 2m×1mくらいのナイロン製の布で、メッシュ状になっています。
 洗米、浸漬、水切りの一連の作業がこの布一枚でとてもスムーズに行えます。

【笊器(そうき)
 竹を割って薄く削り、編んで作った"ざる"のことです。ざるは台所用品として野菜や米穀を洗ったり水気を切ったりするのに用いられますが、酒蔵のざるとは大きさが全然違います(80cm×60cmくらい)。
 酒蔵では水切り用の台、洗い終わった白米を打ち上げる台、米を計量する台などに使います。吟醸用の洗米時には毎日のように使っています。

【計量器】
 重さを量る道具で、各種の分銅(50kg/20kg/10kg/5kg)と調節器(50g単位)で重さを比較して質量を測定します(天秤)。酒蔵では米(玄米、白米、蒸米)、麹などを計量したりと多方面に渡り活躍しています。
 豊の秋では、「看貫(かんかん)」と呼んでいます。「看貫」の「看」は「みる(見る)」、「貫」は尺貫法における目方の単位。すなわち「貫を看る=目方を見る」ということですね。出雲弁では、「ちょい看貫にかけてみてごしない」(ちょっと看貫にかけてみてくれないか)という具合に使います。
 蔵に入りたての頃って酒造道具の名前とか全然わからず困惑しっ放しでした。「看貫もってこい!」って言われて「"缶"を何に使うんですか?」ととぼけたことを言って笑われた記憶があります…。
 
蒸し
【甑(こしき)
 昔から、白米を蒸す装置として、甑という杉材でつくった桶を使用してきました。底部中央に釜で発生した蒸気を取り入れる甑穴があり、その上に蒸気を分散させるさる(コマ)を置き、さらにその上にサナを置き、浸漬米をはりこみます。
 最近は、口径を大きくして、蒸米の取り出しに都合のよい深さにした、アルミニウムや ステンレス製のものが多く使用されるようになりました。金属製甑は、熱伝効果から木製に比べ内側に水滴が生じ、内壁接触部分にやわらかい蒸米(甑肌という)ができるので外壁の保温をしなければなりません。
 「豊の秋」では、木製の甑も現役で使用されています(アルミ製の甑も使用しています)。

【甑下駄(こしきげた)

甑下駄

甑下駄を履いてスコップで掘る

落下傘をホイストで吊り上げる
 蒸し終わった蒸米を取り出すために、大甑内に入るときに足につける下駄のことです。蒸米の高温から足を保護する目的で使用され、蔵人の手作りです。
 私は残念ながら甑下駄を履いての作業風景を肉眼では見たことがないため、蔵人さんから聞いた話をします。蒸しが終わると釜屋さんが甑下駄を履いて甑内に入ります。一旦入ると甑下駄が蒸米に埋まり吸着するので身動きがあまりとれません。ですから、作業のしやすい絶好のポイントに着地しなければなりません。そして、足場が決まれば後はスコップでひたすら掘って隣の放冷機に移していきます。大量の熱い蒸米を掘るわけですから、汗はかくわ、体中は痛くなるわで大変だそうです。蔵人さんも「今の若いもんに出来るかどうかなぁ〜」と。少量の白米の蒸しは小甑を用い、側からスコップで掘っていますが、量も少なく甑下駄を履いて中に入る必要もないので私にも何とか勤まるようで…。
 現在では、大甑での蒸米の取り出し作業は「落下傘(らっかさん)」と呼ばれる円状の網をホイストにより吊り上げて放冷機に移しています。これが導入されたことにより作業効率が格段に向上しました。

【休台(きゅうだい)
 甑に白米を掛ける時、甑から蒸米を取り出す時に用いる道具で、甑の縁にこれを引っ掛けこの台の上に乗ります。これから蒸す白米の量が一段の甑で足りる場合は、休台を使わずとも米を掛けたり蒸米を取り出したりできます。一段甑で足りない場合は、その上にもう一段枠を乗せて二段甑にし、休台を足場にします。

【甑布(こしきぬの)
 甑の中に白米を置き、これを蒸す時に白米の最上部を覆う布のことです。これは、蒸気が米粒の間を吹き抜ける時に蒸気がかたよるのを防ぎ、蒸米の均一化を計るためのものと考えられます。

【こま・さる】
 こまは甑穴の上に置いて、釜から上がってくる蒸気を均等に分散させるための小道具で、「豊の秋」ではさると呼んでいます。これは、こまが猿の伏した形に似ているところから、あるいはこまの材質が欅(けやき)で赤味を帯びており尻の赤い猿を連想するからとの説があります。こまの形は円形、四角形、六角形、八角形など種々のものがあり、これに放射線状に溝が切ってあります。大きさは、甑の底径の約1/5〜1/6です。
 「豊の秋」では、六角形のさるを使用しています。

おもて

うら

【さるのべべ】
 甑のさるを覆うための布のことです。これは、さるの溝に米が入るのを防止し、さるに蒸米が付着するのを防ぐためのものと考えられます。さるに着せる布であるので、『さるの着物』とも言います。

【飯試(めしだめ)
 甑から取り出した高温の蒸米は、仕込蔵内に運ばれて飯布の上に広げ自然放冷します。飯試は蒸米を運ぶのに使用される木製の小桶です。飯布は化学繊維のものを使用していますが、大きさは筵(むしろ)大で、一枚に飯試一丁分の蒸米を広げます。しかし、飯試・飯布による蒸米の自然放冷は多大の労力と広い面積を要するので、現在ではほとんど蒸米放冷機が使用されています。
 「豊の秋」では、木製の飯試、飯布も現役で使用されています(蒸米放冷機も使用しています)。

【かき桶】

 浸漬・水切りされた米を蒸すために、浸漬桶から甑に移す際に使用する木製の小道具です。取っ手を持ち、浸漬桶の脇から米を掻くようにして取り出します。
 酒蔵では「抜掛け法(ぬけがけほう)」と呼ばれる方法で米を張り込んでいます(写真)。まず、少量の白米を甑の中に置き、蒸気が抜けたら更に適量の白米を置くことを繰り返します。

 
製麹
【種切り】
 種麹を散布する小道具です。蒸米放冷機から麹用蒸米出てきた時、麹室に引き込んだ時に使用します。
 散布する時は、片手で左右に静かに振ってやります。種切器についている網目上の格子は目の細かいものですが、一回振っただけでも目に見えない麹菌がたくさん散布されています。

【盛桝(もります)
 床に約24時間置いた麹米を麹蓋に分配して盛る計量用の小道具です。桝の容量は通常1.5〜2.5Kgです。形状は角形または円形で、片手で持って計り取ることができるように親指をかける穴が開けてあります。
 「豊の秋」では、円形の盛桝を使用しています。

【麹蓋(こうじぶた)
 在来法の製麹において使用する麹米を盛り込む杉材製の浅い箱状の容器です。形状は、写真の通りで底板は柾目(まさめ)の材料を使用します。麹菌の繁殖による発熱、水分、炭酸ガスの調整のために1枚の麹蓋に約2Kgの麹を分散堆積し、また空の麹蓋を蓋としても使用します。
 「豊の秋」では、大吟醸酒の麹を造る際に使用します。

【箱】
 製麹の一方法、箱麹法で使用され、麹米を15〜45Kg盛れる大箱のことです。在来の麹蓋より盛る量が多く、箱の数が少なくて済むので労力が省けます。箱の底は木の桟(さん)でできており(さなとも言われる)その上に麻布を敷いて麹米を盛り、通気、品音調節をはかります。
 「豊の秋」では、大吟醸酒以外の麹を造る際に使用します。

【敷布(しきぬの)

ねかし
 筵(むしろ)大の綿の布で、品音調節には欠かせないものです。床もみ後〜出麹前までこの布は使用されます。

【麻布(あさぬの)

出麹
 筵(むしろ)大の麻の布で、通気、品音調節には欠かせないものです。盛り〜出麹まで使用されます。

【自動機械製麹機】

制御部

作動部

 通常、製麹工程では、盛り〜出麹までの作業は「蓋こうじ法」または「箱こうじ法」で行っていますが、併用して「自動機械製麹機」も使用しています。蓋こうじ法では主に吟醸麹、箱こうじ法では吟醸麹以外の麹、自動機械製麹機では普通酒や地伝酒用の麹を造っています。
 自動機械製麹機は盛り、仲仕事、仕舞仕事、盛り〜出麹までの温度管理などをあらかじめコンピュータに入力されているデータに従い実行します。出麹されるまでの間は、麹米が盛られた箱を一定時間毎に動かし品温のばらつきを防ぎます。しかし、機械と言っても制御データを打ち込むのは人間です。麹の仕上がり具合を予想し、品温経過や湿度の具合、仲仕事、仕舞仕事、出麹の時間などを正確に入力する必要があります。
 一度入力したデータはコンピュータ内に保存できますので、既存データをそのまま実行したり一部修正を加えて実行することもできます。あらかじめ、基本となるデータを作成しておけば後の作業もスムーズに行えます。


【温度計】
留点温度計


無留点温度計(デジタル表示)

 酒造工程では温度の推移は大変重要な要素です。従って、これを測定する温度計を必ず備えなければなりません。普通使用される水銀温度計には、その時点の温度を示す「無留点温度計」と最高温度を示す「留点温度計」とがあります。「無留点温度計」には「デジタル表示」されるものもあります。
 豊の秋では以下の様に使用しています。
○麹の品温測定
 主に「留点温度計」を使用します。麹師はこの間、品温のチェックはもちろんのこと、「麹の面(破精込み具合等)」、「麹の香り」などを随時チェックしながら、理想の麹に育て上げていくわけです。
○酒母の品温測定
 主に「留点温度計」を使用します。
 検温する際は「櫂入れ」をしますが、それでも全体が均等の温度になるわけではありません。そのため、3箇所ほど温度を測ってその平均をとります。
○もろみの品温測定
 「無留点温度計」、「留点温度計」のどちらも使用します。
 検温する際は「櫂入れ」をしますが、それでも全体が均等の温度になるわけではありません。そのため、3箇所ほど温度を測ってその平均をとります。
○酒の品温測定
 もろみと同様。

 留点温度計を使用する時の注意は、温度を下げてから(氷等冷たいものに温度計を付け手で軽く振り下ろす)行うことです。これをやらないと誤った措置を下してしまうことになるんです…。
(麹室の例)
・PM4:00 品温:36度、温度計の表示:36度
・PM6:00 品温:34度、温度計の表示:36度
この時、温度を下げて再検温。
・PM6:00 品温:34度、温度計の表示:34度
 
酒母
【暖気樽(だきだる)

木製

金属製
「暖気樽」とは酒母育成のため加温する道具で、釜の中に沈めて熱湯を詰め、それを酒母の中に沈めます。
 保温効果は木製が優れていますが、手入れが大変なことと修理する職人が少なくなった関係で、現在では主に金属製の物が使われているようです。
 「豊の秋」は、杉材の暖気樽が現役で活躍している日本でも数少ない蔵元です(金属製の暖気樽も使用しています)。

【さいころ】
 才槌(さいづち)のことで、木部などを打ちたたくのに用います。暖気樽(杉)に熱湯を詰めたあとノミを打つ際に使用します。
 豊の秋では「さいころ」と呼びますが、みんなが知っている1〜6の目が入ったキューブ状のものではないですよね。私なりに考えてみたんですが、蔵人さんが独特の出雲弁で発音すると「さいづち」は「さいづつ」に聞こえるんですよ。聞いてる方は何のことか分からないし、言う方も言いづらいようです。才槌の”さい”の字をとり語呂をあわせて”さいころ”にしたのではないでしょうか。

【酒母の保温道具】

電熱器

保温マット

酒母室
 酒母の加温に使用される暖気樽と併用して、酒母タンクの底から行火・火鉢・電熱器等で加温する「アンカもと」が広く行われています。暖気樽を使用する方法と比べて多少温度の調節がとりにくいですが、操作が簡単で労力を要しないこと、菌の汚染がないこと、酒母量の欠減がないこと等の長所があります。
 また、この行火等をいれた際、保温効果を更に高めるために保温マットも使用されます。保温マットは軟質ウレタン製で、断熱性・耐水性に優れ、衛生的で取り扱いが簡単です。醪タンクの保温にも使用されます。

【汲掛枠(くみかけわく)
 円筒状の細竹を編んだものあるいは杉材または金属製の角および円筒状のもので、米粒が汲掛枠の外に存在し、溶液がこの中に浸透してたまるようになったもの。写真中の金ひしゃくを使用し、底にたまる液を随時酒母の物料にふりかけます。
 「豊の秋」では、金属製の円筒状の汲掛枠を使用しています。

【水冷器(すいれいき)
 酒母の品温が高くなった時に冷却する道具で、この中に氷と水を入れ、それを酒母の中に沈めます。
 「豊の秋」では、金属製の円筒状の水冷器を使用しています。

【漏斗(ろうと)、漏斗受け】
 プラスチックの円錐形のものでもろみや酒母の分析をするための試料取りに使います。 漏斗の中に化繊布を敷いてその中にもろみを入れると、液体だけが濾されてビンに溜まります。この試料取りの作業は、もろみ期間中ほぼ毎日行われます。
 漏斗受けは漏斗を支えるための台で、蔵人による手作りのものです。

【こぎべら】
 豊の秋では、酒母やもろみの泡掃除などで使用しています。
 酒母、もろみ中の酵母が活発に活動を始めると泡が上がってきます。その泡が落ちるとタンクの内側にもろみが付着しているので、それをへらで取り除いてやります。
 また、酒粕詰めの作業においてもタンク内側に付着した酒粕をこぎべらで取り除いてやります。

【温度計】
 
(もろみ)
【ものさし】

 タンク中に入っている酒やもろみの量(リットル数)を計るのに用い、深さで量を測定します。ものさしの種類は、500mm、1000mm、1500mm、2000mmの4種類があり、酒やもろみの残量に応じて使い分けます。
 ものさしの目盛りは2mm単位で刻まれており、寸法も2mm単位で読みます。目盛り上にちょうど液面がくればそのままの目盛りを読み、目盛りと目盛りの間にきた場合は下の目盛り(大きい方)を読みます。
仮に"300mm"と"302mm"の間に液面がきた場合、"302mm"となります。私も初めてものさしを使用した際、1mm単位で読んでしまい「奇数なんてないぞっ!」などと叱られたことがあります。今でも忘れられません…。
 次に、測定した寸法を「桶早見表」(桶毎に寸法と量を表形式にしたもの)に照らし合わせ、酒やもろみの量を導き出します。この桶早見表は「寸法→量」、「量→寸法」が瞬時に分かり、蔵内では頻繁に使われています。
 豊の秋では、ものさしを略して「さし」と呼んでいます。


【櫂(かい)
 容器中において液体、または液体と固体とを混合攪拌し均一にするために使用する道具です。
 写真中の木製の櫂は、「蕪櫂(かぶらがい)」と言い最も一般的に使用される櫂です。竹棒の先に木製の蕪(台)を取り付けたもので、酒母・醪や酒の攪拌、物料の溶解促進に使用されます。大櫂(長さ約2.3m)、三尺櫂(長さ約1.8m)、もと櫂(長さ約1.5m)、などがあります。最近は、金属製の櫂も使用されています。
 「豊の秋」では、木製の櫂を使用しています(金属製は滅多に使いません)。

木製

金属製

【泡消し機(あわけしき)
 酒母の湧付(わきつき)休時期や醪の高泡時期には盛んに炭酸ガスを発生し、泡は粘稠度(ねんちょうど)を増して細かく高くなり、そのまま放置するとタンクの外に溢れ出ます。昔は竹の柄の先に数本の細竹をくくりつけた「泡消し」を用い人手で泡を攪拌して消していましたが、現在では、泡消し機(高泡防止機)が広く使用されて夜間の泡消しの労力を省くのに役立っています。
 泡消し機は小型モーターの軸の先端に放射状に細い金属棒が付いていて、泡の上面で回転することにより泡に表面が破壊され、内部の炭酸ガスが放散されて回転面より上に上がりません。
 泡消しは1.5mほどの細竹3本を一束として手元を縄で縛って泡消し用具とし、これを体を中心にしてほぼ水平に扇形に左右に振って泡を消します。特に醪や酒母の高泡の最中は担当者が交代で泡消しに当たりますが、この泡消しの担当者を『泡消し』と言います。
 「豊の秋」では、酒母の泡消しは「竹の泡消し」、醪の泡消しは「泡消し機」を使用しています。

泡消し機

竹の泡消し

【泡笠(あわがさ)
 酒母や醪の発酵最盛期には、泡が多量に発生しますが、タンクから泡の溢れ出るのを防止するために、タンクの上縁に取り付ける枠を泡笠と言います。
 現在は、高さ600〜1000mm、厚さ2〜3mmのポリエチレン製の円筒(タンクと同径)のものが使用されています。
 昔は、木製の縦横50cmくらいの板(タンクの円弧に合わせてある)をつなぎ合わせてタンクの縁に装着していました(現在は未使用)。

木製

ポリエチレン製

【温度計】
 
上槽
【酒袋(さかぶくろ)

袋吊り
 醪を入れて酒を搾るのに用いる5〜9L用の袋です。戦前は、木綿の太糸を荒めに縫った袋を夏期に渋引きして使用しましたが、戦後、化学繊維(ナイロン、テビロン等)のものができて、丈夫で手入れが簡単であり、粕離れがよい所からその使用が増加しました。圧搾終了時には、酒袋の中の酒粕を取り出します。
 現在では、自動醪圧搾機が普及して酒袋を用いて上槽する酒蔵は少なくなっています。
 「豊の秋」では、現在でも酒袋を用いて上槽しています。

【狐(きつね)
 上槽に際し仕込桶の醪を酒袋に詰めるための小桶をいいます。容量約10Lの木桶です。醪をひしゃくで汲んで狐桶に入れ、狐桶係は槽の袋掛係の手元に渡します。桶の形は一方がとがって酒袋に詰めやすいようになっており、狐の顔を連想させるのでこう呼びます。
 「豊の秋」では、狐桶を狐の鳴き声からとって「コンコン」とも呼んでいます。現在は、狐桶は使用せず、試桶(ステンレス又はプラスチック)を使用しています。


試桶で醪を酒袋に詰める

【猫(ねこ)
 小型の木製台で、上槽の時など狐使い等が乗る踏み台です。
 「豊の秋」では、上槽に限らず色々な用途で踏み台として使用されています。

【もろみ袋詰め機】
 狐桶によるもろみの袋詰作業は熟練と労力を要するので、これを簡易化するためにホースの先端に取付けて手動で使用する金属製の仕切弁が工夫されました。これを「もろみ袋詰機」と言います。両手で酒袋の口を支えて袋詰機の先端を袋内に入れ、同時に弁を開閉することによりもろみは袋詰されます。もろみ輸送ポンプが導入されて可能となった作業方法です。

【もろみ調節器】

全体像

圧力調節パネル
 袋詰機を使用してもろみを袋詰する際、袋詰機の弁の開閉によって排出が断続的になり送圧に脈動が起こるので、圧力調整用の空気室と圧力の高低により自動的にもろみ圧送ポンプを作動する装置を有する機械を「もろみ調節器」と言います。
 青枠の部分が坊主頭(出雲弁で"ばあず")に似ていることから、豊の秋では「ばあず」と呼んでいます。

【ピストンポンプ】
 ピストンをシリンダー内で往復運転させてシリンダー内容積に変化を起こさせ、液体に圧力をかけて揚水するポンプです。基本的な構造はシリンダーに吸込弁と吐出弁を取付け、ピストンの往復行程に従って両弁を交互に開閉して吐出しと吸込みを交互に行うもので、これを「単道ポンプ」といいます。この型式の代表的なものが「ピストンポンプ」です。
 この型式のポンプは、低速の往復運動のため大型の割に吐出量が少なく、脈動がありポンプ効率は良くないですが、自吸性があり高い揚程が得られる特性があり、粘度の高いもろみの輸送に適しています。
 
濾過、火入れ
【濾過機】
 一般に濾過とは、濾材で作られた濾過層で原液中に含まれる不溶解性物質を取り除き、液のみを通過させる操作をいい、濾過を行う装置が濾過機です。酒蔵で用いられている濾過機は「フィルタープレス型」で、濾過板と濾枠とを交互に重ねて締めつけ、内部を通る液が漏洩しないような構造になっています。網目状になった濾過板に濾紙を装着し、その上に濾過助剤をコーティングします。微小物質(おり等)の少ない原液ほど濾過時間も短くなります。

【蛇管(じゃかん)

蛇管

火入れ
 錫(すず)引き銅、アルミニュームまたはステンレス管をコイル状に巻いたもので、これを釜あるいは槽の中に入れ、温湯につかった蛇管の中を清酒が通るときに加熱され殺菌をします。
 熱源は重油バーナーまたは蒸気が多く、温度調節は温度計を見ながら送酒量を調整して手動で行うのが一般です。
 
酒の輸送
【名醸呑(めいじょうのみ)


本器、わん廻し

 名醸社が発明して特許を持っている呑で、金属製タンクに使用されている金属製の呑です。内部の止め栓をはずして酒を出し入れするためのハンドル付きの道具を本器といいます。
 金属製タンクでわんを呑穴に固定するのにカップリングを使用しますが、そのカップリングを締めるための道具をわん廻しといいます。


【ホース】

ビニールホース

ゴムホース
 清酒・もろみ・水などの輸送に使う用具で、その構造および用途により、送りホースと吸込用ホースの2種類に分けられます。通常、吸込用ホースには内部に補強材が入っています。酒造用にはゴムホース・ビニールホースが多用されています。

【ホースバンド】

連結管、ホースバンド、バンド締め
 ホースとホース、ポンプとホース、ろ過機とホースなどの連結部のホースが外れないように締め付ける金具で、古くはゴムホース用として砲金製三つ折れバンドが主体でしたが、ビニールホースが多くなってからは、フリーサイズのステンレスチェインバンドが多用されています。
 連結管は、ホースとホースを連結するパイプ状の器具で、砲金製・ステンレス製・樹脂製のものがあります。

【小判桶(小判)】
 ポンプ、ホースの連結部分から漏れる清酒・もろみ・水などを受ける小判形の偏平な容器で、材質は木製・アルミ製・ステンレス製があります。
 
貯蔵
【開放タンク、密閉タンク】
 タンク上部の形状によって開放型のものを開放タンクと言い、上部にマンホールのみが開かれていて密封型のものを密閉タンクと言います。木桶はもちろん開放型の容器ですが開放タンクは通常ホーローなど金属製の円筒型のものを言います。密閉タンクは上部に検尺口(けんしゃくこう)が設けてあり、形も円筒型・角型・および竪型・横型があります。

開放型

密閉型

【桶蓋(おけぶた)

開放用

密閉用

 開放用は、半円状のものが二枚一組になった木の蓋を使用します。木蓋は、木香(きが)が酒に移って酒質を劣化させるので、蓋の下面にビニールを覆って使用します。
 密閉用は、金属製のものを使用します。アルミニウムや錫引銅蓋があります。


【張竹(はりだけ)
 半円状の桶蓋を少し持ち上げ、写真のように蓋の周辺近くと木頭(きがしら)の間の隙間に立てかけて、酒のサンプリングなど暫時の作業の間、安定的に蓋を保持する用具です。
 直径4cm程度の竹を約40cmに切り、両端を山型に削ったもので、その尖った部分は上端で桶蓋の裏に接してすべり止めとなり、下端は木頭をまたぐ形となって桶蓋を安定させるものです。

【斗びん(とびん)
 18L入りのガラス容器で、主に酒の貯蔵に使用します。
 プラスチック容器が誕生する以前、薬品の容器として作られたものです。酒の容器としてのガラスは、酒の品質に変化をもたらさない安定し た素材であるため使用されるようになりました。
 一合が180ml、一升が1.8L、一斗が18L、1石が180Lとなります。

【桶梯子(おけばしご)

タンク内梯子

縄梯子
 桶やタンクなど高所への昇降に使用する梯子で、木製・軽量スチール製などがあります。近年労働安全上、梯子上部に横すべり防止用の金具や、脚部にすべり止めが付けられています。タンク内への出入りには、開放タンクではタンク内梯子が、密閉タンクでは縄梯子が使用されることが多いです。

【タンクの冷却装置(冷却マット)】

貯蔵タンク

 貯蔵タンク又は仕込タンクに冷媒が通る蛇管(コイル)が付いたゴム製のマットを巻き、循環させながら冷却します。


【水中ポンプ】
 普通のポンプは水中で使用することはできませんが、水中ポンプは水中に投入しポンプの下部から液を吸入し上部の吐出口から吐出すようになったものです。
 ただし、酒蔵では輸送用ではなく、清酒の調合攪拌・アルコールの希釈攪拌などに攪拌機として使用しています。小型で軽量のため、移動も手軽に行うことができます。
 使い方は、攪拌機を清酒が貯蔵されているタンク上部の蓋を開け、ロープをたぐいながらゆっくりと下ろしていきます。この時、底部の中心にきちんと着地すること(中心から外れたり、ポンプが倒れたりしたらNG)。あとは、電源を差し込んでスタートするだけ。
 お酒の攪拌中に他の仕事をしていると、攪拌の終了時間をついつい忘れてしまいます。ですから、時計や携帯電話のタイマーは欠かせないものになってます。
 
その他
【きき猪口】
 きき酒に用いる容器。白色の磁器製で、内部底面に暗コバルト色の蛇の目模様が入っています。このきき猪口に入れられたお酒は熟成度、色、かおり、味についてそれぞれ注意深くきき酒されます。

【杉樽(すぎだる)
 写真は四斗樽で、一度お酒の容器として使用したあと漬物用として使用しています。
 樽は桶と同種の容器ですが、固定した蓋を有する点で桶と異なります。清酒業界では古くから清酒の輸送及び販売容器として用いられ、江戸時代に至って樽職人は専門化して独立するようになりました。これは酒造業の発展が樽の普及と分化を促したためです。
 樽は杉材を円筒形に組み、竹を編んだ輪(たが)でこれを締め、底部と蓋を固定したもので、わずかに円錐形をしたものが一般的です。
 販売用の容器の種類は4斗(72L)入りの四斗樽(しとだる)(大樽)、2斗入りの半樽、1斗入りの斗樽があります。

【竹簀(たけす)
 丸竹または割竹を編んだもので、下敷きとして使用します。大きさは筵(むしろ)一枚分のものから、長くつないだものもあり、後者は「巻物」とも言います。

【箱洗い機(ケースウォッシャー)】
 清酒の流通段階に使用される箱は、木箱の他にポリエチレンやポリプロピレン製の通称「P箱」と呼ばれる箱が多用されています。何回でも再使用できるので回収ごとに洗浄して使用しますが、その時の箱洗浄に使用される機械です。
 矢印の所にP箱を乗せれば、後は洗浄されて向こう側に出てきます。操作が簡単なうえ、きれいに洗浄できるとあって瓶詰場ではとても重宝しています。

【キャップシーラー】
 瓶詰された製品のキャップの部分をビニール等でシールする時に用いられる機械をいいます。この機械を瓶上部にかぶせると、電熱器の熱によりビニールが収縮されて封印されます。上の小窓から収縮されていく過程を目視できます。最初覗いたとき、あまりの速さにチョッピリ感動してしまいました…。
▼▼▼ ほんの数秒できれいに仕上がります ▼▼▼

ビニールをかぶせる

キャップシーラーをあてる

出来上がり

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