日本酒の醸造−醸造工程別解説
(酒造り工程図と照らし合わせてご覧下さい)
|
| 『麹』 |
●麹の役割
麹は、蒸米に麹菌を繁殖させたものである。麹菌は、蒸米上で繁殖すると同時に各種の酵素を菌体外に分泌する。麹菌自体は空気中の酸素を必要とする好気的な微生物であるため、空気の存在しない醪の中では生きることができず死滅してしまう。
麹菌の生産した酵素はタンパク質の一種で、生物でなく物質であるため、醪中に残存し、酵素作用を発揮する。
日本酒醸造は、酵母によるアルコール発酵(酵母のような微生物が、自己のもっている酵素の力で糖分をアルコールにする作用)によるが、主原料となる白米中のデンプンやタンパク質などは、酵母が利用できない高分子物質の状態にあるため、麹菌の生産する酵素をもって、酵母が利用できるブドウ糖やアミノ酸段階までの形に変えることが麹の最も大きな役割である。 |
|

|
 |
●蒸米上での麹菌の繁殖
蒸米は、麹菌にとって適度な水分と栄養源を含んでおり、麹室という高温多湿の室は、適度 な温度と湿度条件となり、空気(酸素)も充分にあるという好条件のもとで、種麹の胞子が接種されれば、数時間の内に胞子が発芽、菌糸が伸び、また蒸米の内部へも菌糸が侵入していく。
菌糸の増殖は、胞子を接種して約20時間後から急激に増大し、48時間で最大に達する。この菌体重の増加に比例して酵素の生育量が多くなる。
麹菌は胞子接種から出麹までの間、1kgの白米あたり約27gのブドウ糖を消費し、そのエネルギーにより生命活動を行う。
|
| 『製麹』 |
●引き込み
蒸きょう(じょきょう)後、34〜36度に蒸米を冷し、麹室の中で温度を均一にするため、床の上に積み上げ、 布をかけておく。
|
●床もみ
引込み後2〜3時間たって温度と水分が均一になったとき、蒸米を床の上にひろげ、種麹(黄麹菌の胞子)をふりかけ、よく混ぜる。この操作を床もみという。床もみの終わったときの蒸米の温度をもみ上げ温度といい、この温度は以後の麹菌の増殖速度を支配する。
|
●切り返し
床もみ後、約10〜12時間位たつと、粒の表面が乾き、粒同士が互いにくっつき、かたい塊になっている。そこで、蒸米の温度と水分を均一にし、麹菌に酸素を供給するために、堆積した蒸米を崩し、よく混ぜる。この操作を切り返しという。
|
●盛り
切り返し後約10時間、麹菌の増殖による白い斑点が見えるようになる。このままにしておくと、麹菌の増殖による発熱で温度が高くなり過ぎ、増殖が止まってしまうので、堆積してある蒸米をもみほぐし、一定量(30kg位)ずつ箱に入れ、温度調節をしやすくすること。この作業も以後の麹菌の増殖速度を調節するため、重要である。
|
●仲仕事
盛ってから7〜9時間たつと品温が34〜36度まで上昇するため、よく攪拌し、温度を 1〜1.5度下げる。手入れ後は蒸米をひろげ、6〜7cmの厚さにする。これを仲仕事という。
|
●仕舞仕事
仲仕事後6〜7時間たつと、品温が37〜39度まで上昇するため、よく攪拌し、温度を1〜2度下げる。手入れ後は蒸米をひろげ、米層をつくるなど表面積を大きくし、品温の急昇を防ぎながら水分の蒸発を促すことをいう。
|
●出麹
酒母麹は仕舞仕事後約12時間、掛麹は約8時間後に、麹室から出して冷ます。床もみから出麹までの全製麹時間は酒母麹で48〜50時間、掛麹で43〜45時間である。
|
●製麹管理法
製麹管理の第一は、水分蒸発の気化熱によって、麹菌の生育に伴う発熱を除去し、品温の過昇を防ぐことである。
通常、麹室の温度は28度、湿度は70%位である。この条件で蒸米を放置すると、蒸米から水分が蒸発し過ぎて品温が過度に低下する。このため、床もみ時に種麹を接種した数時間、麹菌の増殖を待つ間、これを布などで包み、水分の過度の蒸発を防ぎ、品温の低下を防がなければならない。
しかし、この後の発熱速度は1時間に1kgの白米当たり、5.8kcalにもなるため、この時期 には蒸米を充分に広げ、水分の蒸発を促進する必要がある。
このように製麹管理とは、麹菌の増殖と酵素の生成が最適になる温度経過が行われるように、蒸米水分の蒸発を調節することにある。
|
●麹を評価する2つの基準
麹を評価する場合、突き破精型(若い麹)と、総破精型(老ね麹)の2つの基準がある。「破精」とは、麹菌の菌糸が白く見える状態をいい、「ハゼる」とか「よくハゼこんでいる」という表現を用いる。
|
<総破精型(老ね麹)>
麹室の中で成長した時間が長く、表面にも内部にも総体的に麹の菌糸がハゼこんでい るもので、菌糸が多い分、酵素の生成が進んで糖化力が強い。
<突き破精型(若い麹)>
ハゼこんでいるところと、ハゼていないところがまだらになっているが、米の内部まで よくハゼこんでいる麹で、糖化力は総破精型に準じるが、淡麗な酒質になる。
|