日本酒の醸造−醸造工程別解説
(酒造り工程図と照らし合わせてご覧下さい)
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| 『酒母と酵母』 |
●酒母(もと)とは
昔から酒づくりは、一麹、二もと(酒母)、三つくり(醪)と言われ、酒母(もと)は日本酒醸造における重要な工程である。
酒類の成分であるエチルアルコールは、酵母という微生物の働きによってできるが、その酒母を純粋に大量培養したものを酒母と呼ぶ。
日本酒醪は開放状態で発酵を行っており、麹は多数の微生物が存在する。また、米も蒸し工程で殺菌はされるが、冷却工程で微生物により汚染される可能性がある。現在の日本酒づ
くりでは、開放状態という都合の悪い環境下でも醪は接触した酵母菌により、純粋に醸造がされている。醪をつくるためには、酒母中に元気のよい優良酵母が大量に培養されていなければならない。さらに、酒母には醪を健全な発酵に導くために、必要な乳酸が含有されていなければならない。
つまり、よい酒母とは、
・目的とする優良酵母が多量に培養されており、雑菌(野生酵母、バクテリア)がないこと。
・乳酸を所定量含有していること。
・酒母の使用時に、正常な醪の発酵に適した活性を酵母が持っていること。
以上の3つの条件を具備する必要がある。 |
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●酵母とは
酵母の大きさは約5μm(長さ5〜8μm×幅4〜6μm)程度である。
酵母は自然界に広く住みついており、多種多様な菌株があり、それぞれに特性を持っている。
例えば、ビールにはビール酵母、ワインにはワイン酵母、パンにはパン酵母というように、利用 目的にあった最適の酵母菌株を、長い歴史の中で取捨選択して使い分けている。
日本酒酵母においても、長い年月をかけて選び抜かれた優良日本酒酵母がある。日本酒酵母は、 酵母の分類上サッカロミセス属に属している、サッカロミセスセレビシェ一種だけである。
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●上面酵母と下面酵母
上面酵母とは、醪の上面で活動する酵母をいい、下面酵母というのは、醪の内部(表面より下)で活動する酵母のことをいう。酵母は酸素がある環境では「呼吸」(有酸素呼吸)をし、酸素のない環境では「発酵」(無酸素呼吸)をして、自分に必要なエネルギーを得ている。呼吸能、発酵能というのは、呼吸する能力、発酵する能力を意味する。したがって、上面酵母的(上面発酵酵母)は、酸素が豊富な環境のため、呼吸能が強く、発酵能が比較的弱い。一方、下面酵母的(下面発酵酵母)は醪の内部で酸素が乏しい環境のため、呼吸能が比較的弱く、発酵能が強いのが特徴である。
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●酒母の酒類(↓clickすると、酒母製造工程が参照できます)
| 酒母 |
速醸系酒母(速醸酒母、高温短期速醸酒母、希薄酒母、高温糖化酒母) |
生もと系酒母(山廃もと、生もと、水もと) |
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酒母とは蒸米と麹、水を仕込み、これを酸性にして多数の酵母を純粋に培養したものだが、酒母として備える条件のひとつに乳酸を所定量含有することにある。乳酸は発酵の初期、液に酸性を与え、腐敗菌の繁殖の防止を図るために用いられ、その乳酸をいかにして得るかで、酒母は2つに大別される。
一つは仕込み時に醸造用乳酸を添加する方法で、これは速醸系酒母と呼ばれる。このグループ に入るのは速醸酒母(もと)、高温短期速醸酒母、希薄酒母、高温糖化酒母などがある。
もう一つは、酒母の中で乳酸菌が生え、乳酸菌による乳酸を生成させる方法であり、生もと系酒母と呼ばれている。これには、山廃もと(酒母)、生もと、水もとなどがある。生もとは、仕込みから手もと、山卸(もと櫂り)、折り込み、もと寄せの各操作によって打瀬と称する期間を経る方法。山廃もとは、これらの操作を省略して、生もとを簡易化したものである。生もとは操作経験と時間が必要なので、通常は技術保存的に行われている。
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●酒母の原料
<原料米>
酒母米は溶けをよくする必要から、掛米、麹米とも糖化されやすい性質の米で、しかも精米歩合は70%以下がよいとされる。
<麹>
酒母の場合、力の強い清酒酵母を大量に育てることが主目的なため、酵母に十分栄養を供給できる糖化力の強い麹が必要となる。そのため、「老ね麹」というのは、菌糸が総体的に多く、酵素の生成も進んだ糖化力の強い麹であるために、用いられる。製麹時間も50時間程度のものが使われる。
<乳酸>
乳酸は、醸造用資材規格協議会の定める規格水準に合格した製品を必ず使用し、それ以外のものは使用しない。
<水>
清浄なものを使用する。また、麹中の酵素の溶出を促進し、酵母の増殖に間接的に影響する成分としてカルシウム、クロールがある。硬度10、クロール100ppmになるように加工することがある。
<発酵助剤>
発酵力の強い酵母を充分に増殖させるため、必要に応じて酒母の仕込み水100L当たり、酸性リン酸カリウム(KH2PO4)を24〜48g添加する。
<酵母>
目的とする酒質に適した酵母を選定することが肝要である。協会酵母などを使用すると きは、計画的に購入し、できるだけ新しいものを使用する必要がある。保存する場合は10度以下の低温にするが凍らせると酵母は死滅する。
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●酒母の育成法
酒母育成のポイントは、他の雑菌微生物をいかに淘汰して目的の優良酵母だけを数多く、かつ発酵力を強く育てるかということになる。
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●主な酒母の特徴
<速醸酒母>
仕込み当初に必要な量の乳酸を加え、酒母の雑菌が生成しにくい乳酸酸性として生酸菌などの細菌の繁殖を防ぎ、麹の酵素によってデンプンを糖化させて糖分を蓄積し、優良酵母
だけを純粋に培養する安全な酒母製造法である。
特徴としては、
・仕込み温度は20度が標準で、蒸米の溶解糖化が早く、気温の影響を受けることが少ない
ので、酒母づくりが容易、安全である。
・育成日数が短く、労力燃料が控えられる。
・一定の品質の酒母が得られやすい。
・乳酸を添加し、あらかじめ乳酸菌、硝酸還元菌の作用を阻止してあり、これらによる生産物がなく、酒母自体の味を淡白にできる。
がある。
<高温糖化酒母>
麹の糖化酵素の糖化適温である56度前後で、5〜7時間糖化を行い、酵母の培養基をすみやかにつくってしまい、乳酸を残りの汲水と共に添加した後、急冷して25度程度にして、培養優良酵母を多量に添加する方式。速醸酒母と違い、麹や汲水中の野生酵母の大部分は糖化の際の高温により死滅するので、比較的容易に添加酵母を純粋に培養できる。
<山廃もと>
仕込み時に乳酸を添加せずに自然の乳酸菌の生育を導き、酒母中に乳酸を生成させて酵母を純粋に培養する方法で、原料からくる野生酵母(産膜酵母、野生清酒酵母など)は膨れ時までに淘汰されてしまう。
仕込みは通常6〜8度の低温で行われ、4〜5日、その温度を保つ。この時期を打瀬といい、硝酸還元菌によって亜硝酸が生成する。
山廃もとにおける野生酵母の死滅は、亜硝酸と濃糖、低温、乳酸酸性の4つの相乗効果によるものと考えられている。 |
●培養酵母による酒母省略仕込み(酵母仕込み)
培養酵母(液状、泥状、固形、乾燥)と乳酸を、醪仕込みの初添えの水麹時に添加して醪をつくる方法で、酒母の製造工程が省略又は簡略にできる。
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