Story4 冬 おでん×豊の秋 上撰

冬の城下町で見つけた老舗酒蔵

吐く息が白くなるころ、松江城下の町並みを歩き改めてこの街の美しさを感じていた。松江にはいわゆる観光スポットが多くあるが、この町並みが最もよく風情を感じられる。

城下の南方、東本町のあたりを歩いていると、歴史を感じさせる旧い商家。みつけた、“豊の秋”の蔵元、米田酒造の店舗だ。

店内には、これまでの旅で出会ったお酒はもちろん豊の秋の全ラインナップ、酒器の数々がずらっと並んでいた。お店の人のお話を聞きながら試飲をさせてもらい、買い物を楽しむ。

豊の秋が生まれる場所

「豊の秋に興味があるんです」とお店の人に告げると、店を出て案内をしてくれた。茶色い煙突にはっきりと見える「豊の秋」の文字。米田酒造の蔵がそこにはあった。

松江市登録歴史的建造物にも指定された貯蔵庫は景観要素としての価値も高い。今まで旅の中で味わった豊の秋はこの場所でつくられていたことを実感し、これまでの旅のひと時が思い出された。

赤く灯る提灯に誘われて

日の入りが早いこの時期。酒蔵を後にするとあたりはもう薄暗かった。宿へ戻ろうと歩いていると「おでん」と書いてある提灯が赤く灯っている。

誘われるように暖簾をくぐると、カウンターを取り囲む豊富なタネの数々。店主さんが教えてくれた、おでんは松江では一年中食され愛されていると。

熱燗が体に染みわたる

多彩なおでんの食材に合わせるならこれしかない「豊の秋 上撰」。
上撰はほとんどがこの地で消費され、晩酌酒として親しまれている。松江の食とともに歩んできた酒、なんだがこの町の一員になれた気がした。

口に含むとやわらかく、ふっくらとした香りと豊かで、深みのある旨みが口の中に広がる。さらりとした喉ごしは、丁度よい余韻を残す。
はんぺん、大根、牛すじ、食材にしみ込んだダシがジュワッと広がり、上撰の包み込むような旨みがあいまって豊かな味わいが生まれた。

登場したお酒

  • 豊の秋上撰

    口に含むとやわらかく、ふっくらとした香りと、豊かで深みのある旨みが口の中に広がります。さらりとした喉ごしは、丁度よい余韻を残します。

    時にこのお酒が「甘い」と表現されることがあるのは、米が持つ香りと旨さを十分に引き出すことで生まれた、豊かな風合いがあるからです。

    料理と一緒にお召し上がりいただくことで、素材が持つ旨みとしみ込んだ味を一層引き出し、「美味しさ」が口の中いっぱいに広がり続けていきます。